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トロリーバス

取材・執筆:長谷川 吉典(写真とも)

トロリーバスの情報

京都市のLRTのリーフレットは「今後、LRTの検討を深めるなかで、技術的進歩を踏まえた新しい公共交通システムの検討も必要です」と記し、タイヤトラムの写真などを掲載していますが、架線から電気を取ってゴムタイヤで走る乗り物としてはトランスロールのような目新しい乗り物もある一方で“トロリーバス”が古くから存在しています。

日本で現在営業してるトロリーバスは、

  1. 関電トンネルトロリーバス (事業者:関西電力株式会社)
  2. 立山トンネルトロリーバス (事業者:立山黒部貫光株式会社)

の2箇所ですが、海外では多くの都市の公共交通機関として、バスと同様に著しく近代化されたトロリーバスが今日でも活躍を続けています。

日本ではトロリーバスの情報は少ないのですが、森五宏さんの著作または資料提供による下記の書籍があります。

ただし、現在では上記の本は2冊とも手に入れにくいので、基礎知識を得るには下記のウェブサイトをご覧になるのがよいかも知れません。

とくに黒部ダムオフィシャルサイトは、関電トンネルトロリーバスの運行30周年記念で出版された『日本のトロリーバス』の本の要点を含んでいて、300型車輛の解説は本よりも詳しく、本では白黒だった写真もカラーで見られるので、おすすめです。

さて、写真はフランス・グルノーブルのトロリーバスです。

1993年当時の車種はPR100バスのトロリーバス版、ER100でした。現在は、Iveco(フィアット)グループのバスメーカーIrisbusの最新型トロリーバスCristalisを導入しているようです。

写真:グルノーブルのトロリーバス
☆写真はグルノーブルのトロリーバス(La Tronche:1993年撮影)

連節トロリーバス

トロリーバスにも連節バスがあります。

写真はスイスのベルンのトロリーバスでちょっとクラシックな感じですが、各メーカーの2005年モデルにも連節トロリーバスはラインナップされています。雨降りだったせいか当時の撮影メモは露出データだけで車番も形式も控えていませんが、ウェブで調べたところでは、メーカーは

シャシー
FBW(FBW-Fahrzeug)
ボディー
R+J(Ramseier+Jenzer)
電気関係
SAAS(SA des Atelier de Secheron)

のようです。全部スイスの会社です。1970年代後半の製造のようです。

写真の背景の「駅」と4つの言語で書いてある建物はスイス国鉄のベルン駅です。駅前の市電・バス・トロリーバスの停留所名もただの「駅」となっています。

信用乗車方式なので、乗り降りはこんな感じです。

彼の地の 私設ニュースサイト によれば、チューリッヒでは古いベンツ/ABB製の連節トロリーバス35編成の置き換えで、2006年から2008年にかけてHess/Kiepe製の33編成を新造するとのことです。うち16編成は2車体連節ですが17編成は3車体連節だそうです。

3車体連節トロリーバスの図 を見ると、前から2つ目のドアの対面が車椅子等のスペースのようです。現行の連節トロリーバスと比べて1編成の輸送力が35%増強され、それを年間の費用節減効果に換算すると57万スイスフランになるそうです。

写真:ベルンのトロリーバス
☆写真はベルンのトロリーバス(Bahnhof:1993年撮影)

トロリーバスの架線

写真は架線の交差部分をトロリーバスの集電装置が通り過ぎるようすです。

トロリーバスの架空電車線(架線)は+/−両方の線を空中に張る複線架空式で、集電装置もパンタグラフではなく車体が架線から1車線分くらい横に振れても全然問題なく接触を保ち続けられるように長いトロリーポールを使用します。

ただし、そのため普通の電車の架線(単線架空式)にはない機構が必要になります。

写真の電車線交差部は、軌道でいうとダブルスリップスイッチ相当の進路切り替えを行うものです。接近してくるトロリーバスからの識別信号を受けて、銀色の装置が下図でいうと A→a/A→b/B→a/B→b の4方向の切り替えを行います。

   A
    ̄ ̄ ̄ ̄ ̄\/ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄a
   _____/\_____b
   B

『日本のトロリーバス』の本に関電のトロリーバスの架線の詳しい説明がありますが、複雑な進路切り替えは必要がないので、装置はもっとシンプルになっているようです。

写真:トロリーバスの架線交差部
☆写真はトロリーバスの架線交差部(インスブルック市内:1993年撮影)

市電との停留所の共有

トロリーバスと普通のバスが一つの停留所に発着することができるのは明らかですが、共に架線のあるトロリーバスと市電が同じ停留所に発着することはできるでしょうか?

写真のように、それは可能です。

写真はベルンのトロリーバスが市電と共通の停留所につけているところです。路面には市電の軌道が、空中には市電の架線とトロリーバスの架線が見えます。市電は軌道のほぼ真上に単線架空式の架線を張っています。トロリーバスは架線が車体の中心線から外れていても差し支えないので市電の集電装置が触れない位置に複線架空式の架線を張っています。

市電が右側通行の道路の中央を、トロリーバスが道路の外側を走行しますから、トロリーバスの架線は架線交差を避けて進行方向右側に張ることになります。

やろうと思えばこういうことも可能ですから、先にトロリーバスを導入した道路にあとから軌道を敷設してLRTを追加導入する、あるいはその逆、といったことも不可能ではないでしょう。

写真:トロリーバス・市電共用区間
☆写真はベルンのトロリーバス・市電共用区間(たぶんBahnhof:1993年撮影)

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