報告・資料の目次

京都市の秋のパーク・アンド・ライド

取材・執筆:長谷川 吉典(写真とも)

パーク・アンド・ライドとは

「パーク・アンド・ライド(P&R)」とは、目的地へ行く途中の駐車場に自動車を置いて、そこから先は電車やバスに乗って移動する移動方法のことです。

京都市では、観光ピーク時の11月の休日にマイカー観光客を対象として、嵐山や東山などの観光地の中までマイカーで入り込まずに駅のそばの駐車場にマイカーを置いて電車で嵐山に来てもらおう、という取り組みが実施されています。

2001(平成13)年度と2002(平成14)年度に社会実験を行い、その結果をもとに内容を改善しつつ2003(平成15)年度からは毎年度の施策としてパーク・アンド・ライドが実施されています。

画像:2004年のパーク・アンド・ライド案内パンフ表紙
☆画像は2004年のパーク・アンド・ライド案内パンフレットの表紙

2006年度「パーク&ライド京都 のりかえ(無料)駐車場」

2006年度のパーク・アンド・ライドは下記のとおり実施されました。

秋の京都 嵐山 東山
使って便利!! のりかえ(無料)駐車場情報
5日間限定 平成18年
11月18日(土)・19日(日)・23日(祝)・25日(土)・26日(日)
のりかえ(無料)駐車場とは (京都市都市計画局交通政策室)

上記のページには(実施当時には)「混雑時の嵐山付近」「混雑時の東山付近」の写真も添えられていました。写真が訴えるメッセージは全くそのとおりで、観光客が集中するところにマイカーで押し掛けるのは、実際に現地で見ると明らかに不合理で秋の京都の楽しさを損なっていると感じられます。

2006年度はパーク・アンド・ライドの駐車場は無料でした。駐車場が無料であれば、家族何人かで来て一日乗車券を買って公共交通機関(電車・バス)を利用しても、何箇所も観光駐車場の高い駐車料金※を払うのに対して金銭的にも不利にはならないでしょう。

※駐車料金の相場は1回800円(乗用車)です。

パーク・アンド・ライドが行われているという情報がマイカーで京都に観光に行こうとする人に知れ渡れば、今よりも沢山の利用があると思われます。効果的な情報周知の手段をどう実現するかが重要な課題といえそうです。

この点は、聞くところでは、たとえば毎年同じ場所に駐車場があれば“京都のパーク・アンド・ライド”を観光ガイドブックや雑誌等で記事にしてもらいやすくなりそうと分かっていても、大規模な臨時駐車場のいくつかは企業の協力を得て敷地を使わせてもらっているので、必ずしも毎年同じ場所に臨時駐車場が設置されるとは限らず、そういう恒常的な広報がなかなか出来ない、といった事情もあるようです。

写真:2006年度のパーク・アンド・ライドの広報ポスター
☆写真は2006年度のパーク・アンド・ライドの広報ポスター(市バス車内)

2006年度のパーク・アンド・ライドがスタート

2006年11月は、天候は18日の曇り空からしだいに下り坂になり、19日の日曜日には雨になりました。

写真は“三条口エリア”と案内されている西小路御池下ルの島津製作所の敷地に設置されたパーク・アンド・ライドの臨時駐車場です。夕刻に見に行くと、雨の中、誘導員と調査員の方が役目を果たしていました。

写真のように他府県ナンバーの自家用車の利用がまずまずあるように見えます。

写真:島津製作所の敷地に設置されたパーク・アンド・ライドの臨時駐車場
☆写真は島津製作所の敷地に設置されたパーク・アンド・ライドの臨時駐車場(2006年11月19日)

祝日の“三条口エリア”パーク・アンド・ライド駐車場は満車

11月23日(祝)の天気は曇でした。天気予報では雨が降るかもということでしたが、何とか降らずに夕方まで持っていました。

写真は“三条口エリア”西小路御池下ルの島津製作所の敷地に設置されたパーク・アンド・ライドの臨時駐車場です。収容台数は約70台とのことです。

写真のように午後には満車になっていました。1台出て行ったあとには、すぐ次の車が入るという感じでした。ほとんど満車なので、入場を断って収容力の大きな“京都南エリア”まで行ってもらうよう告げる場合もあるようでした。

誘導員の方に伺ったところでは、車を停めて観光に出かける方々が戻ってくるのは概ね3〜4時間後、人によっては朝停めて夕方まで戻ってこないということで、駐車場の回転数としては1日2回転はなかなか難しい感じ、ということでした。

写真:島津製作所の敷地に設置されたパーク・アンド・ライドの臨時駐車場
☆写真は島津製作所の敷地に設置されたパーク・アンド・ライドの臨時駐車場(2006年11月23日)

駐車場では三条口エリア〜嵐山の往復の電車を案内

“三条口エリア”は、とくに嵐山観光に便利なパーク・アンド・ライド駐車場として、利用者に駐車場と嵐山間の往復の公共交通機関(京福電車:嵐電)の案内を行っていました。

写真は駐車場にマイカーを停めた観光客にチラシを渡して説明する様子です。

案内チラシは次のような内容です。

のりかえ駐車場 ご利用案内

本日は,のりかえ駐車場をご利用頂き,ありがとうございます。
秋の京都,紅葉をゆっくりお楽しみ下さい。

◎駐車場から最寄りの鉄道までの案内図
※島津製作所駐車場から三条口駅前までシャトル便を運行しておりますので
どうぞご利用ください。

◎最寄駅の列車時刻表<土日とも共通>
●京福電鉄嵐山本線列車時刻表
三条口駅→嵐山駅   嵐山駅→三条口駅
※お帰りは17:36発までにご乗車いただくようお願いします。

なお,駐車場は18時に閉鎖し,出庫出来ませんので,18時までに,必ず
駐車場にお戻り下さい。

写真:パーク・アンド・ライド利用者に公共交通での往復の案内を渡す様子
☆写真はパーク・アンド・ライド利用者に公共交通での往復の案内を渡す様子(三条口エリア)

駐車場〜嵐電(京福電車)三条口駅にシャトル便を運行

駐車場と嵐電(京福電車)三条口駅との間に、無料送迎のシャトル便が運行されました。京聯自動車のジャンボタクシーです。嵐電が10分間隔で運行しているので、それに合わせて駐車場と写真の三条口駅前との間を往復していました。写真に写っている看板に記されていますが、最終便は18時でした。

シャトル便の乗務員の方に伺ったところでは、駐車場は昼過ぎには満車になった そうです。

写真:駐車場〜嵐電三条口駅のシャトル便(1) 写真:駐車場〜嵐電三条口駅のシャトル便(2)
☆写真は駐車場〜嵐電三条口駅のシャトル便(三条口駅 左は電車到着時)

駐車場に戻ってきた利用者に対しアンケート調査を実施

シャトル便で駐車場に戻ってきたパーク・アンド・ライドの利用者に対しては、テントでアンケート調査を実施していました。

テーブルの上の調査票を押さえているのはキャンデーのケースです。親御さんがアンケート調査票を記入している間の子供達の間が持つような配慮がなされていました。さすがというか、きめ細かく心配りがされています。

利用実績や調査結果については実験終了後に報告書にまとめられ、

のページより概要が公表されていますので、ご参照下さい。

写真:パーク・アンド・ライド利用者へのアンケートの様子
☆写真は駐車場に戻ってきた利用者に対しアンケート調査をする様子(三条口エリア)

土曜日の“天神川四条エリア”パーク・アンド・ライド駐車場

11月25日の土曜日には、天神川四条エリアを見に行きました。最寄り駅は嵐電(京福電車)の蚕ノ社駅になります。

蚕ノ社駅から国道162号と四条通を通って三菱自動車工業京都製作所と日進電機の提供によるパーク・アンド・ライドの臨時駐車場までの間を、シャトル便が結んでいます。

写真:嵐電・蚕ノ社駅
☆写真はパーク・アンド・ライド“天神川四条エリア”の最寄り駅になる嵐電・蚕ノ社駅

こちらも昼過ぎには満車に

写真は“天神川四条エリア”の三菱自動車工業の駐車場の門のところです。

駐車場と京福蚕ノ社駅との間に運行される無料送迎のシャトル便は、こちらも京聯自動車のジャンボタクシーです。伺ったところでは、昼頃にはもう満車になっていたとのことです。

写真:“天神川四条エリア”パーク・アンド・ライド駐車場を出発するシャトル便
☆写真は満車の“天神川四条エリア”パーク・アンド・ライド駐車場を出発するシャトル便

駐車場に戻ってきた利用者へのアンケート調査を実施

“天神川四条エリア”でも、シャトル便で駐車場に戻ってきたパーク・アンド・ライドの利用者に対してアンケート調査を実施していました。

観光客の集中で嵐電(京福電車)も相当混雑しますが、嵐山までマイカーで行って渋滞に巻き込まれるよりも、定時性に勝る分電車で行った方が満足度が高くなるのはまず間違いないと思います。

写真:“天神川四条エリア”駐車場に戻ってきた利用者へのアンケート調査
☆写真は駐車場に戻ってきた利用者へのアンケート調査の様子(天神川四条エリア)

京都市の秋のパーク・アンド・ライドの課題

京都市の秋のパーク・アンド・ライドは、毎年実施するとともに、高速道路のサービスエリアでの広報などが効果を上げて、マイカー観光客の間での定着を見せ、高い利用率になっています。

今後に残る課題としては、収容台数を大幅に増加させ、かつ広報を行き渡らせて今シーズンのような高い利用率を維持することが上げられるでしょう。

三条口エリアの臨時駐車場の収容台数は約70台、天神川四条エリアの臨時駐車場の収容台数は約110台とのことです。市内のいくつもの企業が秋のパーク・アンド・ライドの趣旨に賛同して休日に自社の敷地や駐車場を提供することで臨時駐車場を実現していますが、パーク・アンド・ライドの効果で観光地のマイカーが目に見えて減るところまで持っていくには、さらに収容台数を桁違いに大きくすることが必要だといわざるを得ません。どうやって必要な収容力を確保するかが、大きな課題だといえるでしょう。

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