報告・資料の目次

第1回 「みんなが主役!公共交通〜持続可能な京都をめざして」

日時
2002年7月27日(土) 13:30〜17:00
場所
職員会館かもがわ
全体司会
能村 聡 (京のアジェンダ21フォーラム 事務局コーディネーター)
各セッションのコーディネーター
中川 大 氏 (京都大学大学院工学研究科助教授)
パネリスト
宗田 好史 氏 (京都府立大学人間環境学部助教授)
植田 和弘 氏 (京都大学大学院経済学研究科教授)

最近、京都では市民が公共交通について考え、主体的に参加し行動していこうという新しい動きがいろいろなところでうまれてきている。第1回目は、そんな様々な動きを紹介しつつ、全6回のフォーラムで考えていく課題について話し合った。

「京都の公共交通の未来を創る市民フォーラム」

第1回(2002年7月27日(土))
「みんなが主役!公共交通〜持続可能な京都をめざして」
第2回(2002年8月31日(土))
「京都のクルマと公共交通の競合と共存〜TDM(交通需要管理)を考える」
第3回(2002年9月28日(土))
「よみがえるバスと進化するタクシー」
第4回(2002年10月19日(土))
「市民が創る新しい公共交通〜LRT(次世代型路面電車)の可能性」
第5回(2002年11月30日(土))
「より使いやすい公共交通のネットワーク化を考える」
第6回(2003年1月18日(土))
「公共交通は誰が支えるのか〜財源から考える」

セッション1 「みんなで創るフォーラムをめざして」

セッション1では、まず、このフォーラムの進め方についての参加者同士の共通理解として

  1. 誰でも自由に意見が言えるオープンな会議であること
  2. 参加するだけの会議から一人一人が創造する会議に
  3. 議論だけに終わらずに具体的な行動へつなげる

という場(フォーラム)をみんなで共に創っていくことをめざすことを全員で確認した。

これからのフォーラム全体の流れが紹介され、7月から来年1月にかけて開催されるこのフォーラムをどのように具体的な動きにつなげていくのか、そのためには市民サイドでどうしていけば良いのか等、今後の議論の方向性についてパネリストと参加者双方で活発に意見が交わされた。

また、ポストイットにそれぞれの回のテーマへのコメント・期待などについて参加者に意見を記入してもらい模造紙にはってもらった(第2回への提案については末尾に)。

セッション1におけるゲストのコメントから

植田 和弘 氏 から

道路や駐車場建設などハード建設ではこれまで支配的だった公共政策全般に需要追随型の考え方を見直す必要がある、車という私的なモノに占領されている都市の公的空間を取り戻すには、車が増えることがまちの発展だという通念を改める時期にきていること、公共空間の復権によって都市で楽しく豊かに暮らせるまちをつくるのための手段としてのTDM(交通需要管理)施策の重要性が指摘された。

ヨーロッパのサステナブルシティ(持続可能な都市)の取組では、環境に我慢して無理して取り組むのではなく、生活の質をよくしていくという政策目標に向けて諸政策を統合する形のまちづくりと捉えられており、交通政策もそのサステナブルシティ政策の一環である。

TDM施策ではまた様々な主体が参加して政策目標も与えられるのではなく自分たちでつくりながら社会実験してみるプロセスに意義がある。その意味で交通の需要を生み出している市民一人一人が需要の管理主体としてTDM施策に参加することが大切である。

宗田 好史 氏 から

公共空間の使い方が市民のものになってきているイタリアの「コモ」の話が紹介された。この二年で車が入れないゾーンが拡大されているという。また、ローマのポポロ広場では、駐車車両で占領されていた広場が、現在は車の進入が規制され、歩く人のためになっている。車が溢れていた時代を経て、車を追放する動きが起こった。今、日本でも成熟社会を迎えて、車を規制する方がいいまちになるし、豊かな都市生活が営めると考える層が出現し、欧州と同じ潮流が起きてくるのではないかと宗田氏は予想する。

欧州でも車の乗り入れ規制は30〜40年かかって実現したものだという。正しいことがすぐ実現するとは限らない、一人一人の満足とパブリックな利益をどう調和させる民主主義(合意形成)にはたいへん長い時間がかかるが、地域に入ってきめ細かい合意形成のプロセスを創ることが大切だと強調した。

セッション2 「京都で今、注目すべき活動が始まっている!」

京都ではすでに市民主体の交通まちづくりの動きがみられる。フォーラム参加者の中にも市民サイドから盛り上がる動きに関わる方が発言し、それぞれから取組内容が紹介された。

100円循環バス

四条通、河原町通、御池通、烏丸通を循環する100円循環バスは、運行開始当初、市民への周知不足と、定時性がなかなか守られないということで、当初は利用者が低迷し、採算ラインの乗客数1200人/日にはほど遠い状況だった。しかし、社会実験における商店街や市民グループなどと協働で行われた100円バス応援団の取組もあり大幅な利用促進が達成された。商店街、NPO、市民団体、マスコミ、交通局、交通局労組、産業観光局、京都府警など、多様な主体の参加と連携に支えられたことが、実験後も本格運行でき、ほぼ採算ラインを達成するまでに成功したポイントである。

[表:100年バスをめぐる一連の動き]
↑100円バスをめぐる一連の動き。
商店街が配布した切符は利用券として使え、半券を集めて景品があたるという工夫もあった。

[グラフ:100円バス乗客数の推移]
↑100円バス乗客数の推移

まちなかを歩く日

河原町通〜堀川通、御池通(2001年度より二条通)〜四条通に囲まれたエリアを対象に、地元住民、事業者、市民団体、行政が参画し2000年7月に「歩いて暮らせる街づくり推進会議」を発足。「歩くまち」をめざして取り組んでいる。毎年11月中旬の週末には、市民主体で歩いて楽しいまちを実現しようと「まちなかを歩く日」が開催され、地元主体のイベントや交通社会実験などが行われている。将来的はここの動きが京都周辺を含めて交通の流れをかえる大きな動きの起点となっていくことが期待される。

[写真:まちなかを歩く日]

この他、嵐山周辺では商店街を中心に構成されるウエストサイド物語実行委員会の観光レンタサイクルの実験や交通政策課による嵐山TDM実験が、また醍醐地域ではコミュニティバス走行に向けた「醍醐地域にコミュニティバスを走らせる市民の会」の取組などが報告された。

セッション3 「京都の動きからひらく公共交通の未来」

討論の要旨

交通問題は地域、観光、商店街などさまざまな問題と相互連関したものとして位置付けられるべきテーマである。渋滞対策であり、温暖化対策であり、商店街活性化策であり、高齢者や障害をもった人に配慮するまちづくりでもある。セッション2でみえた京都におけるさまざまな動きの報告をうけて、セッション3では公共交通の未来を創るための方向性を話し合った。

例えば、交通局の赤字であるが、これまで市民の知らないところで路線や運賃等がきまっていたために市民は赤字を自分の責任とは思わなかった。しかし、京都をよいまちにしていくためには市民自身が担い手となって、自分たちが交通を創るべきである。これからは市民の役割、市民と行政のパートナーシップが公共交通の未来を切り拓く鍵となる。

公共交通は市民みんなのものであるので、その仕組みづくりに市民のニーズや意見を汲み上げて意思決定し、支える役割も市民が担う「市民的公共性」が求められている。また、そのようなシステムのつくり方に関してもルール化が必要である。

会場から提起された論点

30年前に京都の公共交通について議論したフォーラムに参加したことがあるという参加者からは、30年近く経過したが問題は解決していないように感じる。このフォーラムの議論の成果をどう実現させるのかが重要だ。30年前との違いといえば規制緩和で民間が公益交通に関与できるようになったことではないかと指摘。

→今日的課題として規制緩和が公共交通に与えるインパクトを考慮して議論する。

→現在、あちこちに交通体系から見れば小さいかもしれないが、具体的な動きはたくさん生まれてきている。フォーラムはそれを積み上げて輪を広げていく機会としていく。また街に出て行動もおこしていくことが大切である。30年前の動きは無駄ではなくその動きは着実に実を結びはじめている。

これからのフォーラムに向けて

第2回 『京都におけるクルマと公共交通の競合と共存〜交通需要管理(TDM)』 に向けての課題

京都にふさわしいTDM施策とはどういうものか、どんな持続可能な交通システムが考えられるのか、財政的な課題や必要な法的措置についても視野に入れつつ、他地域の事例にも学びながら議論を深めていく。

第2回の課題に関して参加者から出された意見一覧


京都の公共交通の未来を創る市民フォーラム  共催: 京のアジェンダ21フォーラム  NPO法人環境市民

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